B:121ページ 呆然 "母と妻と女の狭間(はざま)で・・・" 留学時代・同棲編

B:121ページ 呆然 ”母と妻と女の狭間(はざま)で・・・” 留学時代・同棲編

闇

あさひの前に座っても、あさひは一瞥も
せずに、ずっとノートに何か書いている。

 私は一瞬声をかけようか迷ったけど、
言葉が見つからなくて、喉まで出かかった
言葉を、そのまま飲み込んだ。

 それから、2時間一言も言葉を口にする
こと無く、無言の時間が流れた。

 気が付くと窓から夕陽が差し込み、時計
に目をやると、6時半を回っていた。

 その時、机の横にふと気配を感じて、
時計から目を離すと、そこに晴美が立って
いた。

 晴美は、私が声をかけるよりも先に、

「あさひ・・・」

 と、一言。
その目には涙が浮かんでいた。

 その短い一言が、終わるか終わらないか
のほんの一瞬で、あさひが晴美の方を振り
向いた。

「連絡、なかったじゃん!!」

 そう言ったあさひの顔は、怒った声とは
裏腹に、今まで見たことがないくらいの
笑顔と、その目には心からの愛情を感じた。
晴美は、その笑顔を見た瞬間、一気に涙が
溢れて、

「帰ってきちゃった。
寂しくて、一人じゃ無理だったの・・・」

 それだけ言うと、あとの言葉は声になら
ないで、嬉しさのあまり、ただその場に泣
き崩れた。

 私は、その光景を見た瞬間、視界を失い、
真っ暗な闇の中に放り出された。

 あさひは、泣き崩れる晴美を抱き抱える
ように立ち上がり、そのまま晴美を連れて
外に出て行った。

image©“ガリー家のアウトドア日誌”

written by 透明(とうめい) ゆき

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この物語はフィクションです
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5月 10th, 2016 by