Story/小説

Category: Story/小説

パーティー
10月 8th, 2016 by yuki.o

 一晩中飲んでいたし、寧子の優しい言葉
にホッとして、ベッドに入ると同時に深い
眠りについていた。

 次に目が冷めたのは、もう3時を回って
いた。

「あ、もうこんな時間!」

 寧子は「午後になったら、またおいで」
って言ってくれていたけど、今からシャワー
して、支度したら夕飯の時間になっちゃう。

 そう思って、行こうかやめようか考えて
いた所に、電話が鳴った。

 受話器を取ると、受話器の向こうから
賑やかな雰囲気と、寧子のいつもの聞きな
れた声がした。

「あんた、いつまで寝てんの?」

 それは私が驚いたことで、返事に困って
いると、

「早く来て、夕飯の支度を手伝いなさいよ」

 
寧子は、そう一方的にまくし立てて、私の
返事を待つこと無く電話を切った。

 あさひのことで、かなり落ちている今は、
そんな寧子の強引さが心地よくて、自然と
顔が笑っていた。

 それから簡単にシャワーを浴びて、とり
あえず部屋にあったドリトスを持って寧子
の家に向かった。

 玄関でピンポンを押すと、出てきたのは
ミチで、

「早くしないと、みんな待ってるよ!」

 そう言って、にこやかに迎えてくれた。

「そんなこと言って、ここはあんたのホスト
じゃないでしょ?」

 それを聞くとミチは、苦笑いで、

「まあ、堅いこと言わずに~」

 この辺が、ミチの憎めない所。
もしもあさひよりもミチと先に知り合って
いたら、今頃ミチと楽しく一緒に暮らして
いたかもしれない。
 ミチはそれぐらい良い人だと思う。

written by 透明(とうめい) ゆき

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この物語はフィクションです
写真は参考のため、本文とは一切関係ありません
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© 2014 Tomoyuki.O(やすこ)





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不安
8月 22nd, 2016 by yuki.o

 寧子が、

「このままAshが戻ってこなかったら
どうするの?」

 それは、私が一番不安に思っていることで、
まだあさひの荷物が手付かずで残ってるとか、
私に無断で、消えるはずがないとか、いな
くならない理由を必死に考えてる自分がいた。

「大丈夫、Ashは黙っていなくならないよ。
ちゃんと帰ってくるから」

 寧子には自信たっぷりの口調で言って
見たものの、ほんとの所は、自信がなくて、
足が震えていた。

〈自分の心はごまかせない〉

それは、自分が一番わかっていること。

 それでも、寧子の優しさが嬉しくて、
徹夜明けのドロッとした朝のはずなのに、
心の中に爽やかなミントの香りが漂って
いるような清々しさを感じた。

 寧子にアパートの前まで送ってもらうと、

「それじゃ、一眠りして午後になったら、
またうちにおいで」

そう言って寧子は帰っていった。

〈もしかしたらあさひが帰ってきてるかも
しれない!〉

そう思うとドキドキしながら、アパートの
扉を開けると、部屋の中はガランとした
空洞で、人のいる気配はゼロだった。

〈はぁ~〉

 心の中でため息一つ。
でも、少しだけホッとしたのは、あさひの
荷物はそのままで、まだいなくなる気配は、
無かったことだった。
 ほんとうは、そんな後ろ向きの安心感は
嫌いだったけど、あさひが帰ってこない時間
は、それさえも私に安心感を与えてくれる
材料。
 それくらい私は不安に心を押し潰され
そうになっていた。

image © 壬丰

written by 透明(とうめい) ゆき

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ACWORKSハートバンド
7月 3rd, 2016 by yuki.o

 その日は、みんなで盛り上がって、気が
ついたら、東の空が金色に輝いていた。

 みんなが帰った後、私と寧子は部屋の
片付けをしながら、晴美がどうして戻って
きたのか、話していた。

「やっぱり、移動先に馴染めなかったのか
な?」

 私が言うと、

「あんたバカじゃないの?
彼女の性格だったら、独りぼっちで孤立して
なんてありえないでしょ?
 理由は簡単。
Ashに逢いに来たんだよ」

 もちろん私だって、そんなことはわかって
いたけど、あえて口にしたくなかっただけ
のこと。
 だって、それを口にしてしまうと、晴美
の気持ちを認めることになって、私自身が
辛すぎるから。
 それと同時に、あさひが私の隣から、
いなくなってしまいそうで、すごく不安な
気持ちになるから。

 私が寧子の言葉に何も言い返せずに黙っ
ていると、寧子が突然、

「ごめん」

と言った。

 寧子を見ると、私にハンカチを差し出し
ていた。
 私は自分でも気が付かないうちに、涙が
こぼれていた。
 
 前にもあったけれど、本当に悲しい時は、
自分でも気が付かないうちに、涙がこぼれ
ている。
 自分自身、涙もろいとは思わないけど、
最近、特にあさひの事になると、自分でも
驚くくらい涙もろくなる。
 そんな時に思うのは、
『私は、本当にあさひが好きなんだなー』
って。

 それだけに、晴美が帰ってきてから、
あさひがいなくなった事は、自分で思って
いるより、心が傷ついているんだなって。

image©ACWORKS

written by 透明(とうめい) ゆき

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友達
6月 12th, 2016 by yuki.o

 あさひの事は、とても心配だったけど、
11時位には、みんなが迎えに来てくれて、
すぐに、Moscowに向けて出発。

 1時間位で無事に、タイ料理のお店に座
っていた。

「で、Ashはあれっきり?」

ミチ達が車を止めに行っていた間に、そっ
と寧子が私に訪ねた。

「うん、そう。
でも、荷物とかはそのまま置きっぱだから、
どっちにしろ、いったんは帰ってくると思
うけど」

 あさひが家を空けても、事件ってわけじゃ、
無いから、警察に通報するのも変だし、
ただ、心配しながら待つしか無い。

 そんな話をしていたら、ミチとしんのすけ
が戻ってきて、さっそく注文。

 行く前は心配だった辛さも、店員のおねー
さんに聞きながら、辛くないのを選んで、
タイ風焼きそばや、トムヤンクンとか、す
ごくおいしく頂いた。

 ご飯を食べて、お腹がいっぱいになる頃
には、ブルーだった気持ちも、すっかりあげ
あげで、なんだか小さなことに悩んでいた
自分が、少し恥ずかしく思えた。

 それからモールに行って、洋服見たり、
雑貨を見たり、みんなでブラブラしてる
うちに、あっという間に夕方になり、帰りの
車中では、今度のパーティーの話題で、盛り
上がった。

 それから、今週末は寧子のホストマザー
が彼氏と旅行で誰もいないから、お酒を買
って、みんなで集まった。

written by 透明(とうめい) ゆき

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タイレストラン
5月 17th, 2016 by yuki.o

 電話の向こうは寧子だった。

「どう?Ashは帰って来た?」

昨日帰って来なかった事を説明すると、

「じゃあ、眠れなかったでしょ?」

やっぱり寧子は気遣いのできる子。

「今日は、ミチさんがMoscowにタイ
料理を食べに連れてってくれるって」

きっと落ち込んでる私のために、ミチさん
に頼んで、気分転換に連れだそうと気を利
かしてくれたんだな、と思った。

 そんな寧子の気遣いにはほんとに感謝
なんだけど、正直言ってお金が厳しくて、
行きたいのはやまやまだけど、ちょっと
出られない感じ。

 私が、行くのを渋っていると、

「あんた、お金ないんでしょ?」

 寧子が直球を投げて来た。

「そうなんだよね。行きたいんだけどさ」

 そう私が言うと、

「紗季が元気ないからって言ったら、ミチ
さんとか、しんのすけとかが、みんなで
おごってくれるって言うから、心配しなく
ていいよ」

寧子はどこまでもそつがない。

 結局、寧子のおかげで、お昼ごはんは
Moscowで、タイ料理を食べることになった。

 オリエンタル料理だからって、タイ料理
は日本料理とは全然違けど、それでも、
カレーやタイ風焼きそば、ラーメンなんか
があって、意外と日本っぽい。

 ちょっとでも日本を感じさせてくれると、
ちょっと落ちてる時には元気が出る。

 みんなの心遣いに感謝しつつ、友達の
ありがたさを心に感じた。

 でも、ちょっとだけ心配だったのは、
私は辛いものが苦手。

 それは心配。
 まあ、アメリカンは全般的に、辛いもん
が苦手だから、アメリカにあるタイ料理は、
酷く辛いことはないかなって、少し安心。

image©“Arun Residence.”

written by 透明(とうめい) ゆき

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不安
5月 16th, 2016 by yuki.o

 アパートに戻ると、人気はなく、やっぱり
部屋は真っ暗。

 部屋に入って電気をつけると、今朝出た
時のまま、あさひが帰ってきた様子は無か
った。

「日曜日まで帰ってこないのかな?」

そう思うと本当に不安で、たまらない気持
ちになった。

 シャワーを浴びて簡単に夕食を済ませる
と、少し落ち着いて周りがよく見えるよう
になった。

 あらためてまわりを見回すと、あさひの
ものは全部置いてあり、特になくなった物
はなかった。
 クローゼットの中も、ほとんどの洋服は
残っていて、長期で出かける支度をした
様子もなかった。 

「帰ってくるよね」

そう、自分に言い聞かせて、その日は早々
にベッドに入った。

 翌朝目覚めると、時間は8時近く。
気持ちの良い朝日に照らされて、冬支度の
始まった黄色い葉を付けた楡の木の上を
リスたちが元気に動き回っていた。

 ベッドの隣を見ると、いつもいるはずの
あさひはいなくて、やっぱり昨日は帰って
来なかったみたい。

 それから、寧子から借りた日本の漫画を
読んだり、またうとうとしたり、休日の
まったりした時間を満喫していたら、お腹
がすいたので、コーンフレークを食べに
リビングに行くと、いつの間にか、10時
を回っていた。

 台所で、お皿にコーンフレークに牛乳を
掛けてリビングに戻ると、急に電話が鳴っ
た。

「Hello?」

image©“pink!ng”

written by 透明(とうめい) ゆき

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闇月
5月 15th, 2016 by yuki.o

「どうしたの?Ashは?」

心配そうに、ミキちゃんがそう聞いてくれ
た瞬間、いままで我慢していた感情が一気
に溢れて、涙が止まらなくなった。

 図書館を出て、外のベンチに座って、涙
と共に今の不安と悲しい感情を一気に吐き
出して、気が付くと1時間が経っていた。

 その間ミキちゃんは、時々相づちを打つ
けれど、黙って聞いてくれて、いつの間に
か、スコールの後の七色の虹のように、
あさひとの問題が解決したわけではないけ
れど、心の中は晴れ晴れとした気分になっ
た。

 ひとしきり話し終わると、ミキちゃんが、

「話してくれてありがとう。
どう?すっきりした?」

とだけ、言った。

 私は、自分でも気が付かないうちに、
真っ黒で大きな不安に押しつぶされて、
いつの間に、自分を後戻りできない、漆黒
の闇の中に追い込んでいた。

 そんな私を気遣って、真夏の太陽の元に
救い出してくれた、ミキちゃんの気持ちが
本当に嬉しかった。

「もう、Ashの事を信じて待つしかない
よね」

 今まで不安で、ただ待つなんてとても出来
そうに無かったのに、ミキちゃんに言われ
ると、不思議と安心して待てそうだった。

 結局、閉館の午前0時までミキちゃんと
話していて、最後はJhonにアパートまで送って
もらった。

 ミキちゃんは最後に、

「いつでも相談してね」

って、素敵な笑顔を残して帰っていった。

image©“Bill Young”

written by 透明(とうめい) ゆき

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無人の部屋
5月 14th, 2016 by yuki.o

 アパートの扉を開けると、やっぱりあさひ
はいなくて、ガランとした無人のリビング
があるだけだった。

 手早く着替えて学校に行く準備を済ます
と、寧子と一緒に急いで学校に向かった。

 教室に入ると、いつもの様に騒々しい
ミチ達が、晴美のことを噂していた。

「なんか、学校に戻るかわからないらしい」

ミチの話だと、とりあえず戻れるかの確認
があっただけで、実際にこっちに戻るかは、
検討中だって。

 どうやら、ミチ達みんなはすでに晴美が
帰って来ていることは知らないらしく、
帰ってくるかもわからないと思っているみ
たい。

 もし、すでに晴美が帰ってきてることが
わかったら、どれだけの騒ぎになるか想像
できなくて、しかも、晴美の帰省が、あさひ
に逢うためだけの目的だったと知ったら、
ミチは切れるほど怒ることが目に見えてい
た。
 それを考えて、みんなに晴美が帰って来
ていることは黙っていた。

 その日のお昼ご飯の時に、あさひが学校
に来てないことを知った。
 
 今日は金曜日。
あさひはこのまま週末中、帰って来ないの
だろうか・・・。

 授業が終わって図書館のいつもの席に行
くと、ミキちゃんだけが勉強していて、
あさひの姿は見えなかった。

「Hi,紗季ちゃん!」

 ミキちゃんが真夏の太陽のように素敵な
笑顔で挨拶をしてくれたけれど、私の返事
はジメジメとした梅雨の長雨のような暗い
笑顔だった。

written by 透明(とうめい) ゆき

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運命の赤い糸
5月 13th, 2016 by yuki.o

「車がないってことは、あさひもいない」

 そう思った瞬間、ほっとしたのか、自然
と涙が頬を伝った。

 自分でも気が付かなかったけど寧子が、

「ちょっと、あんたなんで泣いてんの?」

 そう言われて、初めて自分が涙を流して
ることに気がついた。

「あれ、なんでだろ?」

 そう言ったものの、あさひがいなかった
ことで、涙がでるくらい安心したことが、
自分でも意外だった。

 でも、もしも、あさひとアパートの前で
会ってしまったら、説明する暇さえもらえ
ず、いきなりアパートを出される雰囲気を
感じてたからだと思う。

 晴美が図書館に来た時のあさひの動揺と、
晴美の泣き出すしぐさを見て、到底二人の
間には入れないことを、私は悟った。

 と同時に、あさひと晴美が一緒に図書館
を出て行った時、例えようもない不安感に
襲われた。

 2人が手をとっている姿は、あたかも
前世からの運命のように自然で、苦難の末
にやっと出逢った恋人のように、お互いに
結ばれる運命だということを理解している
ことが、ひと目でわかった。
 それだけに、私が割り込む余地がなく、
あさひと話し合う余地が無いことが、硬い
岩に染みこむ一滴の水のように、あさひか
ら離れないと決めた私の固い決意を簡単に
打ち砕き、自分からあさひのアパートを出
ていかなければいけない衝動にかられてい
た。

image©“MOON ARTEMIS”

written by 透明(とうめい) ゆき

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夜空
5月 13th, 2016 by yuki.o

結局、うとうとするものの、しっかり眠
れずに、空が紺藤から淡藤色に変わってい
くのをじっと見つめていた。

 そのまま空を見つめていたつもりが、気
が付くとすっかり空は明るくなり、時計を
見ると、7時近かった。

 リビングに行くと寧子とお母さんが、
朝食の用意をしていた。

「あら紗季起きた?」

 寧子のホストマザーの、愛が溢れる笑顔
に一瞬癒やされたけど、これから学校で
あさひに会うかと思うとすぐに憂鬱な気分
になった。

 そんな、私の沈んだ気分を察したのか、
ホストマザーが、

「ちゃんと食べて、笑顔で学校に行きなさい。
そうすれば、きっといいことがあるからね」

そう言ってくれた。

 その言葉に少し心が軽くなり、朝食は
しっかり食べられた。

 その後寧子に、このまま学校に行くか聞
かれたけど、さすがに昨日と同じ洋服では
まずいから、いったんアパートに帰って着替
えてから行くと言った。

 寧子はそれを聞いて、

「じゃあ、急いで出ないと!」

 そう言いながら、急いで学校の準備をし
始めた。

 正直、アパートには戻りたくなかったけ
ど、それでも、いつかはアパートに戻らな
ければならないから、だったら早いほうが
いい。

 幸いなことに、寧子が一緒に来てくれる
から、今ならいける気がする。

 2人でアパートに歩いて行くと、アパート
の前にあさひの車はなかった。

image©“Mikhail Kalugin”

written by 透明(とうめい) ゆき

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